中長期対策がとられるまで、緊急避難的に浜岡原発の停止を要請した総理発言について、
中部電力や地元関係者には戸惑いがみられるのは当然ですが、
全体として、国内は一定の評価をしているように感じられます。
また、海外でも、アメリカは「日本としては比較的迅速な決断」と評価している。
私としては、とりあえずの「ジャブ」として評価しますが、資本主義国家の我が国において民間企業の活動を国家が規制するのですから、最終的には立法措置を講じるのが望ましいと思います。
そうでないと、中部電力もたとえ総理の要請といえど、おいそれと応じられない。
株主代表訴訟や大口ユーザーから補償を求められる懸念があるからだ。
私が中部電力の社長なら、こう返答するでしょう。
「総理の要請を重く受け止め、浜岡原発を停止する。
ただし、次の3つのことを政府に受け入れていただきたい。(前提条件付きの受け入れ)
浜岡原発停止に伴う中部電力の逸失利益を補償していただきたい。
(=火力に切り替えると、燃料費増で中部電力の半年分の利益が吹っ飛ぶらしい。それを補償せよという意味)
地元企業など関係者に説明を行うなど、地元の理解を得るよう努めていただきたい。
浜岡原発停止に伴い電力の安定供給に支障が生じないよう、政府として最大限の努力をしていただきたい。(=関西電力からの電力融通を政府からも働きかけてくれという意味) 」
電力会社は、民間企業だけど政府に許認可権を握られているので、政府に物申すようなことはなかなかよう言わんかもしれないけど、民間企業の立場でまともに考えるならそういう話になるでしょう。
そうならないようするには、法律で規制するしかない。
法律で規制しても補償の議論は出るでしょうが、少なくとも正統性ができる。
今国会中にでも立法措置を講じるよう考えるべきでしょう。
(スケジュール的に現実的でないと言われるのは承知の上どす。
しかし、総理が言い出したんからやらざるを得ないよ。)
そして、その国会審議の過程で、
なぜ浜岡原発だけなのか、
今後どうするのか、
(中長期的対策を講じた後は、今まで通り原発を動かすのか!? )
(原発の管理、補償等を今後も政府答弁どおり「第一義的に」民間電力会社に委ねるのか!?
その場合、国と民間電力会社の役割・責任について、どのように考えるのか!?)
(今後の資源・エネルギー政策をどう考えるのか!?)
等々について、ビジョンを語ってほしい。
こうしたことに関して参考になるのが、5月3日の「NHKニュースウオッチ9」番組インタビューでの高村薫さんの下記の意見です。
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(前段略)
(ナレーション) 高村薫さんは、非常用電源が屋外に設置され、対策が施されていなかったことに愕然としています。
(高村薫さん) 「想定外」という言葉が使われましたが、今回の場合にはそもそも想定しなければならないことが想定されていなかったという意味では、「人間のやることには限界がある」以前の話で、やはり「問題外」の事態だったと私は思っている。
「これで大丈夫だろうか」と想定するときに、非常に恣意的に自分たちに都合のいいように作ってきたという感じがする。ですから、私はこれは科学技術のモラルの問題だと思う。
さらに、高村さんが厳しい視線を送っているのは政治です。
原発推進を巡る対立。
政治家が客観的データを元に論ずるより先に、原発を政争の具にしてしまったと感じてます。
村が二分されて賛成反対に分かれて対立するような不幸な歴史がずっと続いてきたわけですよね。
その中で、本当の技術的な問題が結局誰も理解できないまま、正しい情報が出ないままになってきた…。
日本の原子力政策が行われてきた半世紀の間は、55年体制と同時でしたので、
原発の問題が常に賛成か反対かに分かれて、常にイデオロギーと一緒にされてきた。
それが非常に不幸なことで、私たちは消費者あるいは国民として、イデオロギーや政党色を(脇に)置いて、まさに科学技術として、どのような技術的な評価が行われてきたのか、それを知りたい。
そして、事故が起きた今こそ、判断に必要なデータがあると指摘している。
この地震国で原子力発電をする時のコストをもう一度冷静に計算し直してみる必要が絶対にあると思う。
それは例えば、耐震化工事に係る費用、こういう事故が万一起きた時の補償とか賠償、
その上で、私たちがそれでも原発を使うのか、それこそ私たちの選択にかかっている。
(中略)
これまでと同じように生きる選択肢はないんだと思っている。
私自身は、今すぐには無理だけれども、10年というスパンで考えたときには、
日本は(原発から脱却して)次のエネルギー社会に進むべきだと思っている。
原子力発電という技術を否定するものではありませんけれども、日本は地震国なので無理だと。
そういう理由です。
(大越キャスターの後コメント)
高村さんは、自分は科学技術に対して全面的に信頼を持って育ってきた世代で、科学技術というものを前向きに評価しているということでした。
そこで、この震災を機に、次世代のエネルギー社会をつくる夢を掲げて一歩抜け出すことを日本は考えるべきではないかということを話しておられました。(以下略)
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この地震国において、しかも近い将来、東海地震、南海地震が勃発する可能性が高まっている現状において、万一の補償も含めるとそのコストは莫大なものになるが、それを全部受け入れて原発によるエネルギー確保を今後も進めるのか-という発言には、大いに考えさせるものがあります。
一方、原発を見直すことに関しては、
「太陽光発電や風力発電などの他の手段で、今のエネルギー需要を補うのは難しい。」
「その場合、今の経済水準、生活を落としてもいいのか?」
という有力な反論、問題提起が当然出てきます。
そうしたことについて、しっかりとした国民的議論が必要と思う。
もちろん、議論を始めると百家争鳴で収拾がつかなくなる心配もあります。
だから、これまで冷静な議論を封印し、55年体制の下で「まあまあ」でやってきたのでしょう。
でも、高村さんの言われるように、エネルギー問題に本気で向き合わなければならない場面に直面していまった。ここで逃げてはいけないのだと思う。
だから、管政権には、単に浜岡原発を停める・停めないだけの議論に終わらせず、
エネルギー政策の在り方について、イデオロギー色を乗り越えて、客観データに基づく議論を国会に巻き起こしてほしいと思っています。
(たぶんムリでしょうけど…と最後にぶち壊しにする(笑))
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原子力発電所は、世界中にどれくらいあるの? 【九州電力】
http://www.kyuden.co.jp/energy_nuclear_world_count.html
【原発】浜岡原発の全原子炉停止を菅総理が要請
http://news.tv-asahi.co.jp/news/web/html/210506043.html
ミニ解説・浜岡原発 運転停止要請の背景は 【NHK「かぶん」ブログ】
http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/200/81126.html
浜岡原発の運転停止要請 【Yahoo!トピックス】
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/local/hamaoka_nuclear_power_plant/
中部電、浜岡停止巡り調整に苦慮 結論持ち越し 政府要請に法的根拠なし 株主らに説明難しく
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819694E2E5E2E2EB8DE2E5E2E7E0E2E3E39797EAE2E2E2
「事前連絡なく寝耳に水」「国策なら全原発止めるべきだ」波紋広がる地元自治体
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110507/trd11050700260000-n1.htm
「浜岡停止要請」戸惑う御前崎市 「再開困難」経済に打撃 静岡
http://sankei.jp.msn.com/region/news/110508/szk11050802490004-n1.htm
浜岡停止要請 周辺市長は理解 静岡
http://sankei.jp.msn.com/region/news/110508/szk11050802490005-n1.htm
浜岡原発の運転停止要請に泉田知事コメント
http://www.kenoh.com/mimi/pc/12600014.html
「当然」「唐突」 首相の決断、与野党から賛否両論
http://www.asahi.com/politics/update/0507/TKY201105070494.html
福島原発事故の海外の反応
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/world/fukushima1np_overseas_reaction/
朝まで生テレビ!「原発」第1弾!
http://www.youtube.com/watch?v=XY6Ia3BF5iw
中部電力(9502)の株価 【Yahoo!finance】
http://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/chart/?code=9502.T&ct=z&t=6m&q=c&l=off&z=n&p=s,e25,e75&a=v
静岡・浜岡原発:全面停止 原発政策、思惑にズレ
◇自然エネルギーに転換--首相
◇危ない1カ所切り捨て--経産省
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20110510ddm003040103000c.html